90%と100%の間にあるもの

ある老師の言葉として、こんな話を聞きました。

50%努力すれば、50%の成果が出る。90%努力すれば、90%の成果が出る。

しかし、100%努力すると、100%ではなく、1000%の成果が出る。

先日、経営哲学を学んでいる経営者たちと、この言葉について話し合いました。

50%努力すれば、それなりの結果が出る。90%努力すれば、かなりの結果が出る。

ここまでは、なんとなく分かります。

しかし、なぜ100%になった途端、結果が100%ではなく1000%になるのでしょうか。

もちろん、これは数字の話ではありません。

では、100%努力するとは、どんな状態なのでしょう。

寝ても覚めても、そのことを考えている。

答えが見つからなければ、別の方法を試す。

失敗しても、また考える。

今までのやり方が通用しなければ、それさえ捨ててみる。

何かに取りつかれたように、寝食を忘れて一つのことに心を集中させる。

そんな状態なのかもしれません。

では、それは90%の努力と何が違うのでしょう。

私は、90%までは、

まだ「今までの自分の延長線上」にいる

のではないかと思います。

自分の知識、自分の経験、自分のやり方の中で、一生懸命頑張っている。

ところが100%になると、それだけでは足りなくなります。

「もう、どうしたらいいか分からない」

「だめだと思った時が本当の仕事の始まり」(稲盛和夫)

そこまで行くからこそ、今までとは違う考え方を探し、人に聞き、やり方を変え、自分自身も変わらざるを得なくなる。

そこに、90%と100%の大きな違いがあるのではないでしょうか。

仕事は、自分を磨く「修行」

稲盛和夫氏は、仕事に一生懸命打ち込むことを非常に大切にしました。

ただ長時間働く、という意味ではありません。

目の前の仕事に真剣に向き合い、製品の声を聴き、「これでいいのか」「もっと方法はないのか」、うまくいかないのであれば「この子(製品)はどこで怪我してしまったんだろう」と考え続ける。

その繰り返しによって、人は仕事だけでなく、自分自身を磨いていく。

稲盛氏は、「常に創造的な仕事をする」

昨日と同じことを漫然と繰り返すのではなく、毎日改善・改良を考え続けることが進歩につながる、とも説いています。

僧侶であれば、坐禅をしたり、読経をしたりして自分を磨くことができます。

しかし、経営者やリーダーが毎日何時間も座禅することは難しい。

でも、稲盛氏は、

仕事そのものを修行なので、一心に仕事をすることで自分を磨くことができる。

と説きました。

難しい問題から逃げず、壁にぶつかり、考え抜き、乗り越える。

その経験によって自分の器が少し大きくなれば、以前なら答えが出なかった問題にも対応できるようになります。

同じ出来事を、以前とは違った高さから見ることもできるようになる。

仕事によって、自分が一段上がるのです。

それでも、1000%は一人ではつくれない

しかし、それだけで1000%に届くでしょうか。

私は、そこにはもう一つの力が必要なのではないかと思います。

それが、「他力」です。

他力というと、「人に頼ること」のように聞こえるかもしれません。

でも、ここでいう他力は違います。

自分ができるところまで、本気でやる。

すると、その姿を見ていた誰かが、

「それなら私も手伝おう」

と言ってくれる。

別の人が、人を紹介してくれる。

思いもしなかった情報が入ってくる。

ずっと考え続けていたからこそ、

ふとした瞬間に、これまでのやり方を根本から変えるアイデアに気づく。

そして時には、

「どうして、今このタイミングで?」

と思うようなチャンスまで現れる。

「天が味方した」としか思えないようなことが起きることがあります。

もちろん、それを単なる偶然と呼ぶこともできるでしょう。

しかし、同じチャンスが目の前にあっても、90%の自分には見えなかったものが、100%考え抜いた自分には見える、ということもあるのではないでしょうか。

そして、ついに、自分一人の力に、人の力、環境の変化、偶然、そして新しい発想が掛け合わされた時、

100%の努力が、1000%の結果につながっていく。

私は、老師の言葉はそんなことを伝えているのではないかと思うのです。

「誰のために」100%やるのか

今日、8月24日は、稲盛和夫氏が亡くなられてちょうど4年になります。

晩年のインタビューで「人生で一番大事なもの」を尋ねられた稲盛氏は、まず、

「どんな環境にあろうとも真面目に一所懸命生きること」

を挙げました。

そしてもう一つ、人間が持つ「自分がよくなりたい」という思いだけではなく、利他の心を持ち、皆を幸せにしたいという思いを心に描いて生きることを語っています。

ここまで考えると、1000%の結果を生むために必要なのは、単なる「猛烈な努力」だけではないのかもしれません。

何のために、これほど頑張るのか。この仕事によって、誰を幸せにしたいのか。

お客様のためなのか。

社員のためなのか。

会社をもっと良い場所にするためなのか。

社会に何かを残すためなのか。

自分のためだけではない目的が加わったとき、人はもう一段強くなれる。

そして、不思議なことに、周囲の人もその目的に力を貸したくなる。

もしかすると、それが100%から1000%へ向かう最後のピースなのかもしれません。

いま、あなたが取り組んでいる仕事を一つ思い浮かべてみてください。

自分は90%まで頑張っているのか。それとも、本当に100%まで行っているのか。

そしてもう一つ。

その100%は、誰を幸せにするためのものでしょうか。

自分の名誉のためですか?

そこに答えが見つかったとき、今まで見えなかった景色が、少しずつ見え始めるのかもしれません。

参考:稲盛和夫オフィシャルサイト/WEB chichi(致知出版社)

Image(2012年ロスアンジェルス盛和塾塾長例会にて)