第1話で、「アメリカの幼稚園では、子どもたちにリーダーシップを教える」という話に少し触れました。

今日は、そのことについて、もう少し書いてみたいと思います。

もう20年以上前のことです。

息子がアメリカの公立幼稚園に通い始めたとき、私が驚いたことの一つが、先生が4歳の子どもたちに向かって、何度もこう言うことでした。

「自分のリーダーシップを発揮しなさい!」 (Exercise your leadership!)

日本の教育しか知らない、べたべたの日本人だった私は、

「ひえ〜、さすがアメリカ。進んでる〜!」

と、顎が落ちるほど驚いたものです。

先生たちも、「リーダーシップ」という言葉が子どもたちに与える力をよく分かっていました。

先生が「リーダーシップを発揮しなさい」と言うと、子どもたちはしゃんとするのです。そして、「自分たちは将来、素晴らしいリーダーになるんだ」と言わんばかりの顔つきになる。

なんて素晴らしい自己イメージの与え方だろう、と思いました。

では、4歳の子どもにとって、「リーダーシップを発揮する」とは、具体的に何をすることなのでしょうか。

そこで教えられていたのが、次の「3P」です。

時間を守る(Punctual)

礼儀正しく、親切にする(Polite)

忘れ物をせず、準備を整える(Prepared)

たとえば、スクールバスに乗り遅れて学校に遅れたら、「自分のリーダーシップを発揮できていなかった」。

忘れ物をしたときも、誰かをぶって泣かせてしまったときも、「リーダーシップを発揮できていなかった」と考えます。

偶然、私が保護者アシスタントとして学校にいたとき、おもちゃの取り合いになり、片方の子どもが泣いてしまう場面に出会いました。

そのとき、先生はすぐに「謝りなさい」とは言いませんでした。

「二人で話し合いなさい」と教えたのです。

まず、「どうして、こんなことになったの?」と、それぞれに説明させます。

そして、ここがすごいと思ったのですが、

「そのとき、どんな気持ちだったの?」

と、自分の感情まで振り返らせるのです。

「イーサンが僕のおもちゃを取ったから、怒った。僕は傷ついた」

「でも、僕はずっと待っていたのに、マイクがおもちゃを離さなかったから、僕も怒った」

先生は、さらに尋ねます。

「どう言えば、相手に分かってもらえたと思う?」

「次は僕だからね。待っているからね、と言う」

「では、マイクはどう言えばいい?」

「分かった。次は遊んでいいよ、と言う」

そこまで話し合ってから、最後に「お互いに謝りなさい」となるのです。

これは、「Polite」の実践です。

みんなに親切にすること。自分の気持ちをきちんと言葉で伝えること。そして、感情に任せて行動しないこと。

こうして子どもたちは、リーダーシップとは、誰かを動かす前に、まず自分から始まるものだと教えられます。

同時に、自分をどう抑えるのか、自分の感情をどう伝えるのか、問題が起きたときにどう話し合うのかも学んでいきます。

だからアメリカ人は、みんな「自分はリーダーだ」と思っているのか、

私は、妙に腑に落ちたのでした。

ところで、この「まず自分を治める」という考え方は、決してアメリカだけのものではありません。

先日、致知出版社の藤尾秀昭社長が書かれた『小さな人生論』が、メールで届きました。そこには、安岡正篤先生の『経世の書「呂氏春秋」を読む』から、こんな話が紹介されていました。

中国の殷の時代、湯王が名宰相の伊尹に尋ねます。

「天下を取りたいが、どうすればよいか」

伊尹は答えます。

天下を取ろうと思うなら、まず自分の身を治めること。

「凡そ事の本は、必ず先ず身を治む」

何事も、その根本は、まず自分を治めることにあるという意味です。

何千年も前から、人間の本質は少しも変わっていないと、藤尾社長は書かれていました。

自分を治める。

これは、リーダーシップの基本です。

自分が自分にリーダーシップを発揮しなければ、何も始まりません。

たとえば、消防士になりたい。宇宙飛行士になりたい。花屋さんになりたい。

あるいは、「離婚専門の弁護士になりたい」。

本当に、そう答えた5歳の女の子がいたんです!

子どものころの夢を実現するためには、まず、自分は何をすればそこへ近づけるのかを考えます。そして、必要なことを一つずつ実行していきます。

ときどき立ち止まり、本当にこのままで目標にたどり着けるのかを確認する。新しい情報を得る。必要な人とのネットワークをつくる。

そうやって、一段ずつ階段を上っていくのです。

そして、5歳のときに「離婚専門の弁護士になる」と言った女の子は、22年後の今年、ロースクールを卒業し、晴れて、ニューヨークでも有名な家族法専門の法律事務所に就職したのです!(その法律事務所は、彼女のおばさんが創立した会社でした)。

また、16歳のときに、

「私はCIAに入って、スパイになりたい」

と言っていた女の子もいました。

彼女も、2年前に本当にCIAへ就職しました。

今では、彼女の仕事について何を聞いても、

“It’s classified.” (それは機密なので話せません)

という答えしか返ってこなくなってしまい、少し寂しいのですが……。

けれど、二人とも、自分の未来に向かって、自分自身にリーダーシップを発揮し続けたのだと思います。

自分の夢を実現することも、組織のビジョンを実現することも、基本は同じです。

目指すものを決め、そこへ進むために必要なことを考え、自分を動かし、周囲と関係を築きながら、一歩ずつ前へ進んでいく。

それが、リーダーシップなのだと思います。

ということで、次回は「組織におけるリーダーシップ」について考えてみましょう。

今週も読んでいただき、ありがとうございました!